【船外機のお勉強 ♯2】船外機を長持ちさせる定期メンテナンス12選

オフショア

こんにちは、船長です。

今回は、船外機のお勉強シリーズ第2弾ということで、船外機の定期メンテナンスについて記事を書いていきます。

この記事は、以下の方にオススメ。
・船外機を長持ちさせたい方
・自分でメンテナンスをしたい方
・メンテナンス内容を知識として身につけたい方

はじめに

船外機のお勉強#1で説明した通り、船外機は自動車のエンジンと比較して非常に劣悪な環境下で使用されるものです。

そのため、自動車のように最低限オイル交換しておけばある程度持つというわけにはいかず、厳しい環境なりに、それに対応したメンテナンスをする必要があります。

今回は、船外機の寿命を長持ちさせるためのメンテナンスにはどんなものがあり、何のために実施しなければならないのかを解説します。

定期メンテナンス箇所と目的

定期メンテナンスを頻度順に説明します。

エンジン始動直後の暖気

頻度:毎回
目的:エンジンの燃焼室の保護

これはメンテナンスというものとは種類が違うかもしれませんが、エンジンを長持ちさせるために必ず覚えておいた方が良い扱い方です。

これは車でも同じだと思いますが、エンジンが冷えた状態で負荷をかけた場合、最悪ピストンの内側に傷が入り密閉度を確保できなくなり、燃費の悪化、出力の低下を引き起こす原因になります。最悪の場合、そこからオイル上がりが発生して点火不良やプラグの被りが発生してエンジン停止につながる可能性があります。

やることは簡単で、マリーナに着いたら釣りの準備をする前にエンジンをつけておきエンジンが温まってから出航することです。このとき、徐々にスピードを上げていき急のつく操作はしないようにするのがベターだと思います。

エンジン停止前のアイドリング

頻度:毎回
目的:冷却経路の保護

帰港時はエンジンがチンチンに熱くなっているため、着岸後は絶対にすぐにエンジンを切らないようにしましょう。

すぐに切ると、冷却経路にある海水が内部で一気に蒸発して塩釜状態になり、冷却経路を詰まらせたり、電食を早めたりします。

エンジン停止前はアイドリングを数分間続け、温度を下げてからエンジンを停止しましょう。

着岸後だけでなく、釣りをするときにエンジンを切って魚にプレッシャーを与えずに釣りをしたいと考える人もいると思います。特に青物やカツオなどのナブラ打ちで、群れを追っかけた後にエンジンを即切りする人もいると思います。

自分も最初はやっていたことがありました。。ただ、釣果は伸びるかもしれませんが、これは本当にエンジンにとっては良くないことなので、やめた方がいいと思います。

釣果とエンジンどちらを優先すべきか考えたときに、私は命を預けているエンジンを優先します。

ちなみに、緊急停止を繰り返した船外機の冷却経路はこのようになります↓
塩がアノードタブの隙間に入り込み、アノード交換しようとしても固着して取り外せないという状況に、、アノードの意味がなくなるばかりではなくこれが水が流れる経路で起きたらオーバーヒートでエンジン停止です、、

エンジン冷却経路のフラッシング

頻度:毎回
目的:冷却経路の保護

冷却経路のフラッシング(水洗い)は毎回行っておきたい日常メンテナンスになります。

先に説明した通り、エンジン停止前のアイドリングはもちろんですが、アイドリングし終えた後でもエンジン内部は相当熱い状態です。

その中に海水をとどめたままにすると、同じように内部で塩が蓄積して冷却経路が塞がれていきますので、帰港後は釣り具と同じように船外機にも水通しを行ってください。

また、時間のある時は以下のフラッシングキットを使って、蓄積した塩を落とすのも長寿命化に一役買うと思います。

エンジンオイル・エレメント交換

頻度:半年 or 100時間毎
目的:エンジンの潤滑性能維持と冷却性維持

エンジンオイルは性能維持と寿命に大きく影響してくる消耗品になります。

船外機の場合は、高回転、高負荷状態で長時間使われ続けるためエンジンオイルの劣化は非常に早くなります。そのためこまめに交換することが必要です。

安いオイルを使用せず、純正オイル以上のグレードのオイルを使用することで長寿命が保てます。

【備忘録】海上係留の船外機オイル交換方法
海上係留状態の船外機のオイル交換をDIYで実施した時の備忘録です。プレジャーボートの維持費節約にDIYで実施する方の参考にどうぞ。

耐水グリス補充

頻度:半年 or 100時間毎
目的:稼働部の潤滑、防錆

結構忘れがちになるのが、耐水グリスの補充ではないかと思います。

忘れないようにするために、オイル交換と同時に実施すると覚えておくと良いと思います。

特に、自分のボートにスパンカーがなくバック立てで船を流す方は、船外機の周辺に塩水がかかりやすいのでしっかりと稼働部にグリスを補充しておく必要があると思います。

【備忘録】忘れがち。船外機への耐水グリスの補充について
忘れがちな船外機のメンテナンス。耐水グリスの補充について実施記録としてシェアします。

ギアオイル交換

頻度:半年 or 100時間毎
目的:稼働部の潤滑、防錆

エンジンオイルの交換を知っていても、このギアオイルの交換をしなければいけないことを知らない人は意外と多いのではないでしょうか。

#1でもすこし触れましたが、エンジンの動力をプロペラに伝えるためにギアがその前段についており、前後進のレバー操作に合わせて適切なギアが噛み合う形になっています。

よく、教習所でニュートラル状態から前進や後進に入れるときに「カカカカカカッ・・」を音をさせずに一発で入れなさいと言われたと思いますが、あれはこのギアが噛み合う前にギアとギアが擦れている音です。

ギアオイルはそのような擦れやギアの摺動抵抗を減らしたり、錆からギアを守ってくれる役割があります。

交換周期こそエンジンオイル等と同じですが、例えば海上係留しているボートの場合、作り上、ギアオイルは交換できないため海上係留の人は交換するために一旦船を陸に上げる必要があります。

正直私は年間1回ほどしか船を陸揚げしないため、100時間毎という目安は完全に無視してしまっていますが、本来は可能な限りメーカの推奨周期で交換したいものです。

なかなか私のように交換できないという人も、注意したいのはプロペラにラインが絡まったときです。ラインがプロペラに巻きつくと、プロペラ軸から海水が内部に入らないようにシールしていたゴムが傷つき海水がギアオイルに侵入してしまいます。

海水とギアオイルが混じると、乳化してオイルが白く濁ります。こうなるとギアを摩耗から守る性能や修道抵抗を減らす性能は確保できなくなり、最悪ギアが錆びて故障につながります。

通常の交換時もオイルが白く濁っていないかは新品のオイルと比較して注意深く見ておきましょう。
ちなみに↑の画像はギアオイル白濁したときのものです。

アノード交換

頻度:1年毎
目的:電食の抑制

ボートオーナーであれば一度は耳にする電食という言葉ですが、なかなか意味を理解していないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

高校の化学の授業で習うイオン化傾向で説明できます。イオン化傾向とはイメージしやすい言葉でいうと、金属の溶け出しやすさを表しています。電気を通す水溶液(海水)の中に、2種類以上の金属が存在するとき、イオン化傾向が高い金属から低い金属に向かって電流が流れ、イオン化傾向の高い金属が海水中にイオンとなって溶け出す現象が起こります。これが電食と呼ばれるものです。

例えば、プロペラがステンレスだった場合、対策を何も施さないと少しずつプロペラが溶かされていき、強度劣化や形崩れによる燃費の悪化等につながっていくわけです。

これを防ぐのがアノードと呼ばれる亜鉛の塊です。
アノードは亜鉛(Zn)でできており、ステンレス等の主成分となる「鉄」「クロム」「ニッケル」を電食から守ってくれます。

【イオン化傾向】
以下の順番で金属は溶け出しやすい。

カリウム(K)>カルシウム(Ca)>ナトリウム(Na)>マグネシウム(Mg)>アルミニウム(Al)>マンガン(Mn)>亜鉛(Zn)クロム(Cr)鉄(Fe>カドミウム(Cd)>コバルト(Co)>ニッケル(Ni)>スズ(Sn)、鉛(Pb)>(水素H)>銅(Cu)>水銀(Hg)>銀(Ag)>金(Au)

ステンレスに限らず、船外機に使用される金属はイオン化傾向をアノードよりも低い金属(合金)を使用して電食から守っているということになります。

ここからが本題になりますが、上記の説明でお分かりになったと思いますが自らを犠牲にして(他の金属よりも先に溶け出し守る)船外機の部品を守っているため、1年に1回は交換しておく必要があります。アノードがなくなったり小さくなったりすると十分な効果を発揮できないからです。

インペラ交換

頻度:1年毎
目的:冷却系統の機能維持

インペラとはエンジンを冷却するための海水を汲み上げるゴム製のペラのことを言います。

使っていると劣化し固くなったり、交換せずに放置するとペラがかけ落ちて海水の汲み上げ効率が悪くなったり、最悪はペラが回らなくなりオーバーヒートにつながります。

定期的な交換は、それを防ぐ大切なメンテナンスになります。

交換作業にはエンジンのロアケースをはずす必要があり、DIYでもできますが正しい知識がないと部品を正しく組み上げれなかったり、ボルトの固着など後々の整備に支障をきたす事態になることが想定されるため初めはマリーナに交換を依頼するのがベストだと思います。

船底塗装

頻度:1年毎
目的:貝やコケの付着防止(船底の抵抗物排除)

停泊場所や使用頻度にもよりますが、大体1年すると船底に貝や苔がつきます。

燃費が悪化するだけでなく、放っておくと塗装が剥がれていき剥がれたところに貝が付着するとなかなか取れないので定期的な塗装が大事です。

船底塗料はいいお値段しますが、貝や苔が付着しずらい等のそれなりの性能をもっているので必ず専用塗料を塗ってください。

私の所有する23フィートくらいの船であれば2人でやって半日程度で塗装が終わるのでDIYも全然ありです。

コツはたっぷりとケチらず塗ることです。もともと塗料が塗ってあった線に合わせてマスキングテープを貼っておくと綺麗に塗れます。

バッテリー交換

頻度:2〜3年毎
目的:エンジン始動性確保

バッテリはエンジンをかけるために必ず必要なものです。

バッテリが劣化すると、バッテリ容量が低下し必要な電圧、電流量を流せなくなったり、充電性能が悪化しエンジンを回しても満充電にならないなどの影響があります。

そうなると、エンジンを始動できず最悪海の真ん中で漂流なんてことになりかねません。

交換周期は数年単位ですが、バッテリのヘルスチェックは毎釣行前に確認しておきましょう。

そして、劣化の兆候が見られたらすぐにバッテリを交換しましょう。

スパークプラグ交換

頻度:1〜2年毎
目的:エンジン点火機能維持

スパークプラグはガソリンに点火するための部品です。

火花を飛ばす隙間に、燃え残ったカーボンやオイル等が付着すると点火性能が悪化し、最悪エンジンが回らなくなります。

個人的には頻繁に交換する部品ではないような気もしますが、エンジンの停止はリスクが大きいので交換までしなくても点検だけは1年に1回は実施するのが望ましいと思います。

燃料フィルター交換

頻度:2年毎
目的:ガソリン(燃料)の異物除去

完全に忘れがちなのがこちらの燃料フィルター。

意外と汚れているものになりますので、詰まりで燃料が送れなくなるともちろんエンジンは回らないので気づいたときに交換できるように覚えておきましょう。

特に、金属製の古い燃料タンクを携行缶として使っているという人は、錆等が混入している可能性もあるためフィルターの汚れには注意を配ってみてください。そのような汚れがある人はフィルターだけでなく携行缶も新調しましょう。

おわりに

長かったですが、これが全てできていればエンジン長持ち間違いなしです。

命を預けるエンジンを大切にメンテナンスして楽しいフィッシングライフを送ってください。

そもそも船外機とはどんなもの?という方はこちらを読んでみてください。

【船外機のお勉強 ♯1】船外機の特徴と仕組み
船外機のお勉強シリーズです。船外機の基礎を習得してエンジンを長寿命化させることを目的としています。
シェア丸管理人
船長

海が近い町に生まれ育ち、物心ついた時から釣り漬けの毎日。

海・川・池・湖・・・
様々なフィールドで釣りを経験。

現在は主にマイボートで近海から深海まで、旬の美味しい魚を求めて毎日を楽しんでいるサラリーマンアングラー。

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